不整形地
2024.02.19
不整形地の価格を決める補正率表やかげ地割合、計算方法は?
不整形地の不動産評価額算出において、特にややこしいのが奥行き距離の計算です。今回は知れば案外簡単な、計算上の奥行き距離の算出方法から不整形地の土地評価額の算出方法まで、実際シミュレーションを行いながら計算方法を学んでいきます。まずは今回挙げたようなわかりやすい例から、不整形地の評価額計算に慣れていきましょう。
不整形地とは
不整形地とは正方形や長方形以外の不規則な形をした土地のことを言います。土地の途中で傾斜があるような土地も不整形地となります。代表的な不整形地の形状としては、三角形、台形、辺が斜めに傾いている土地、細い道の奥に広い土地がある旗竿地、緩やかにカーブした道路に面している土地などがあります。他にも境界線がギザギザしていたりと不規則な形の不整形地はたくさんあります。
不整形地における奥行きとは
不整形地の評価額を計算する上で、重要な指標が奥行きです。通常の正方形や長方形の土地の奥行きであれば、道路に面した地点から自分の土地の一番奥まで直角に奥行きを測ればおしまいです。間口×奥行きが土地面積となり、路線価等に応じて評価額が決まります。 しかし、不整形地の場合、そう単純に測れません。間口と奥行きを普通に直角にとると当然長方形か正方形になりますが、不整形地の場合は長方形か正方形に含まれない「かげ地」が生まれます。かげ地は自分の土地ではないため、奥行きをこの方法で測ると自分の土地ではない部分まで含んだ評価額になってしまいます。
そのため、不整形地の奥行きは法律で定められている下記数式をもって算出します。
『土地面積÷間口距離=奥行き距離』
※実際の最奥部までの距離と上記で算出された距離のどちらか小さい値を奥行き距離として採用
具体的な奥行き距離の計算方法
ここからは三つの例を出して奥行き距離を算出してみます。評価額算出における不整形地の奥行き距離は、現実の最奥部までの距離より短くなることが多いです。
間口20m、土地の一番奥までの距離が50m、土地面積500m2の三角形の不整形地の奥行き距離
長方形や正方形の土地であれば奥行き距離は単純に50mとなります。しかし、三角形の不整形地の場合、前述した土地面積÷間口距離=奥行き距離を適用します。
『500m2÷20=25m』
この場合は算出した値の方が現実の最奥部までの距離(50m)より小さいので、25mが奥行き距離となります。
間口40m、土地の一番奥までの距離が50m、土地面積1200m2の台形の不整形地の奥行き距離
これも三角形の不整形地と同じく、土地面積÷間口距離=奥行き距離を適用します。
『1200m2÷40m=30m』
算出した値の方が現実の最奥部までの距離(50m)より小さいので、30mが奥行き距離となります。
非常に不規則な形をした間口80m、土地の一番奥までの距離が10m、土地面積600m2の土地の奥行き距離
不規則な形でも計算上で奥行き距離を求める場合は同じです。土地面積÷間口距離=奥行き距離を適用します。
『600m2÷80m=7.5m』
算出した値の方が現実の最奥部までの距離(10m)より小さいので、7.5mが奥行き距離となります。
土地評価額計算における奥行価格補正率と奥行長大補正率、間口狭小補正率、不整形地補正率
奥行きがない土地、ありすぎる土地、不整形地は使用用途が制限される使いにくい土地です。そのため、不動産評価額を下げる補正率というものが存在します。ここでは4つの補正率を紹介します。
奥行価格補正率
まず、奥行価格補正率は、地区ごと、土地の奥行きごとに合わせての補正率です。
< 奥行価格補正率表 >
引用:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
例えば普通住宅地に奥行きが70mある土地があるとします。この表に当てはめると70mの土地の奥行価格補正率は0.84なので、仮にこの土地の路線価が1億円だとすれば、評価額は8,400万円まで下がるという計算です。
奥行長大補正率
奥行長大補正率は間口に対して奥行きがあり過ぎる土地に適用される補正率です。奥行距離÷間口距離で出た値に応じて補正率が設定されています。
< 奥行長大補正率表 >
引用:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
例えば土地の間口が20m、奥行きが80mだとします。80m÷20m=4となり、この表の中だと4以上5未満の項目に該当します。
この土地が普通住宅地にあったとすれば、0.94の補正率がかかります。例えば路線価の単純計算で1億円の土地だと評価額は9,400万円まで下がるというわけです。間口狭小補正率
間口狭小補正率は狭い間口で使いにくい土地に適用される補正率です。単純に間口の距離と土地の区分で補正率が決まります。
間口狭小補正率表
例えば普通住宅地区にある間口が5mの土地は4以上6未満に該当するため補正率は0.94です。例えば路線価の単純計算で1億円の土地だと評価額は9,400万円まで下がるというわけです。
不整形地補正率
不整形地補正率は、かげ地割合によって決められる補正率です。かげ地割合とは、不整形地を正方形や長方形に綺麗に囲った土地(想定整形地)のうち、陰地がどれくらいの割合かを示した割合です。
< 不整形地補正率表 >
例えば間口40m、奥行き20mの三角形の不整形地の場合、40m×20m×1/2=400m2が面積となります。この場合の想定整形地の面積:40m×20m=800m2の長方形です。かげ地の面積は600m2-300m2=300m2となります。かげ地割合は400m2÷800m2×100=50%です。この不整形地が普通住宅地にあった場合、かげ地割合50%だと上記表内のA、B、Cそれぞれに補正率が異なります。A、B、Cのいずれかを決めるのが下記の地積区分表です。
< 地積区分表 >
前述のかげ地割合の計算での例をそのまま用いて考えます。この例だと普通住宅地にある500m2未満の土地なので、A区分です。かげ地割合50%、普通住宅地にあるA区分の不整形地補正率は0.79。例えば路線価の単純計算で1億円の土地だと1億円×0.79=7900万円評価額は7,900万円まで下がるというわけです。このように不整形地補正率はかげ地割合と地積区分を組み合わせて算出することを覚えておきましょう。
不整形地の評価額算出シミュレーション
そして、これら4つの補正率は評価額算出にあたって併用することが可能です。ただし、不整形地補正率と、奥行長大補正率は併用できません。
つまり併用できるのは、
パターンA:奥行価格補正率×間口狭小補正率×不整形地補正率
パターンB:奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率
この2パターンのいずれかとなります。どちらか小さい数値を採用する決まりです。また、併用した補正率の限度額は0.6となります。
さて、それでは実際にシミュレーションを行いましょう。奥行き60m、間口6m、面積150m2、路線価60,000円/m2という普通住宅地区にある不整形地の場合の評価額を出してみます。
- 奥行60mなので奥行価格補正率は0.86
- 間口6mなので間口狭小補正率は0.97
- 奥行60m÷間口6m=10、従って奥行長大補正率は0.9
- 想定整形地は間口6m×奥行き60m=360m2。かげ地は360m2-150m2=210m2。かげ地割合は210÷360×100=58%(小数点第2位未満切捨)。かげ地割合58%で普通住宅地A区分なので不整形地補正率は0.75
上記を掛け合わせていきます。
パターンA:奥行価格補正率×間口狭小補正率×不整形地補正率
0.86×0.97×0.75=0.62(小数点第2位未満切捨
パターンB:奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率
0.86×0.97×0.9=0.75(小数点第2位未満切捨)
計算の結果、パターンAが0.62と小さい値になりましたので、パターンAの補正率が採用されます。
最後に評価額を出します。
150m2×60,000円/m2=900万円
上記が整形地の場合の評価額ですが、 補正率が0.62となったので
900万円×0.62=558万円
558万円がこの不整形地の評価額となりました。
不整形地のメリット
不整形地のメリットは上記のような補正率がかかることで、一般の土地より安く購入できることです。ただ、自分でいざ持つと資産価値は低いですし、売却の際にも苦労することが予想されます。不整形地をあえて購入する場合もあるかもしれませんが、用途計画や出口戦略をしっかり立てておく必要があります。
不整形地の扱いに困ったら専門業者に売却を!
不整形地は建築できる建物の形状に工夫が必要ですし、用途も難しいことから、居住用でも商用でも持て余してしまうことが多いです。処分しようとしてもなかなか納得いく業者と出会えず、仲介を依頼しても買い手が見つからないことも珍しくありません。
なんでも買取不動産のような不整形地の買取専門業者であれば、自社で買い取ることができるため、スピーディーに土地を処分するお手伝いが可能です。不整形地の売却をご検討でしたら、是非なんでも買取不動産までご相談ください。