事故物件
2024.03.04
事故物件の告知義務のルールを解説。売却や賃料値引きの相場価格は?
死亡事案が発生したいわゆる事故物件に関して、できるだけ入居や売却に不利な情報は教えたくないと考えるのは物件オーナーとしては当然の心理です。今回は事故物件の告知義務のルールについて解説するとともに、事故物件の運用と価格相場について紹介します。法令を遵守した上で事故物件をどう扱うか考えていきましょう。
そもそも事故物件とは何か
一般的に事故物件と聞くと「直近で人が亡くなった物件のこと」とイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、実は法律上では事故物件のはっきりした定義はありません。不動産に関する法律は国土交通省管轄の宅建業法(宅地建物取引業法)で定められていますが、そこでは人が亡くなった物件に関して「心理的瑕疵あり」物件として分類されています。
心理的瑕疵とは心理的な抵抗感を発生させる事柄のこと。「心理的瑕疵あり」物件は心理的瑕疵の内容を買主や売主に告知する義務があります。
住むのに抵抗感がある物件としては比較的近い過去に人が亡くなった物件以外に、嫌悪施設、迷惑施設が近隣にある物件も心理的瑕疵あり物件に該当します。近くに暴力団の組事務所がある、墓地や火葬場がある、産業廃棄物処理場や原発がある、刑務所や精神病院があるなど。これらをひっくるめて心理的瑕疵あり物件というのですが、今回は一般的に事故物件といった時に示す「人が亡くなった物件」について説明を進めていきます。
人が亡くなったら全部事故物件なのか
一般的に事故物件というと人が亡くなった物件を指し、細かい亡くなり方どうこうよりなんだか気味が悪い物件だから入居は嫌だと感じる人が多いかもしれません。しかし、単純に人が亡くなったといっても下記のようにさまざまなパターンがあります。
- 高齢者が老衰で自然死した
- なんらかの病気で想定外の突然死した
- 治療中の病気により病死した
- 室内で転倒等により事故死した
- 廊下や階段等の共用部で転倒などにより事故死した
- 室内で殺人事件が発生した
- 室内で自殺した
- 共用部で殺人事件が発生した
- 火事や地震等の災害により亡くなった
これら全てが同じレベルの心理的瑕疵とは言えないはずです。高齢者が老衰で自然死したのと室内で殺人事件が発生した事故物件では、室内で殺人事件が発生した事故物件の方が嫌悪感が強い人が多いのではないでしょうか。また、高齢者が老衰で自然死したといっても見つかるタイミングによって心理的瑕疵のレベルは変わります。真冬に亡くなり、翌日に発見されるのと、真夏に2週間経って発見されるのでは、後者の方が心理的瑕疵は大きいと感じる人が多いはずです。腐敗や匂い等による家屋へのダメージも後者の方がより大きく、心理的な面以外に物理的な面でも原状回復にリソースを要します。
このように一言に事故物件といってもその心理的瑕疵具合はそれぞれ違いますが、つい最近までは人が亡くなった物件は全て事故物件として扱われていました。物件オーナーは借主や貸主に対して告知事項として死亡事案が発生した部屋であることを告げる必要があったのです。しかし、これは物件オーナーにとってはあまりに不利な内容です。独居の高齢者が増加している現状を踏まえても今後孤独死の増加は間違いなく、特段事件性がなく室内環境にダメージがない案件に関しては、告知義務を無くしても良いのではという動きが生まれていました。
そこで2021年10月に策定された「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の中で、「こういうものは心理的瑕疵あり物件だから告知義務があるよ、逆にこういうのはないよ」という基準が明文化されました。
法律でいうところの心理的瑕疵物件に当たる条件
それではどのような物件が心理的瑕疵物件に該当し告知義務があるのでしょうか。ガイドラインでは告知義務がない物件について述べられているので、それをもとに消去法で考えていきます。
【告知義務なし】
①対象不動産内で発生した自然死や不慮の事故死(賃貸借・売買物件ともに適用)
②対象不動産内及び通常使用する共用部で発生した、自然死や不慮の事故死以外の死亡事案から概ね3年経過(賃貸借のみ適用)
③対象不動産内で発生した、自然死や不慮の事故死発覚後に特殊清掃が行われてから概ね3年経過(賃貸借のみ適用)
④対象不動産の隣接住戸と通常使用しない共用部で発生した、自然死や不慮の事故死以外の死亡事案(賃貸借・売買物件ともに適用)
⑤対象不動産の隣接住戸と通常使用しない共用部で発生した、自然死や不慮の事故死発覚後に特殊清掃が行われた事案(賃貸借・売買物件ともに適用)
上記を整理すると告知義務については以下のように解釈できます。
- 自然死や孤独死で特殊清掃が発生しなかった事案に関しては、賃貸売買物件共に告知義務なし
- 自然死や孤独死でも特殊清掃が発生した事案に関しては、賃貸物件は概ね3年経過するまで告知義務あり
- 自然死や孤独死でも特殊清掃が発生した事案に関しては、売買物件だと告知義務がずっと生じる
- 殺人や自殺などの事案に関しては、賃貸物件は概ね3年経過するまで告知義務あり
- 殺人や自殺などの事案に関しては、売買物件だと告知義務がずっと生じる
- 隣戸や通常使用しない共用部で発生した事案に関しては賃貸売買物件共に告知義務なし
さらに噛み砕くと、賃貸物件の場合はどんな事案が発生しても3年経てば告知義務はなくなる売買物件の場合は特殊清掃が発生したりや事件性がある事案の場合は、永遠に告知義務があるということになります。
告知義務が発生する物件は以下を告げる必要があります。
- 事案の発生時期
- 場所
- 死因
- 特殊清掃が行われたこと
また、告知しなくても良いものに該当する場合も、社会的影響が大きい事件等に関係している場合は告げる必要があります。
所有する物件が事故物件になってしまったら
所有する物件が事故物件になった場合、まず上記で初回したガイドラインに沿って告知義務があるかないかを把握することが大切です。その上で問い合わせが来た際には取引の相手に必要事項を伝えなければなりません。当然、告知をすると普通の物件よりも入居を見送る客は多くなります。そのため入居を促進するためには以下のような対策が必要になります。
- 賃料・売却価格を下げる
- 賃貸の場合、1〜2ヶ月程度のフリーレントなど特典をつける
- 最新設備にリフォームし、物件の魅力の向上をはかる
また、賃貸物件であればなんとか上記三つを組み合わせながら3年経てば、よほど社会的影響が大きい事件の現場でもない限りは通常の賃料に戻せるという考え方ができます。問題は売買物件の場合です。売買物件は事件性のある死亡事案や特殊清掃が発生した事案の場合は永久に告知義務が生じるため、心理的瑕疵ありの事故物件になった時点で安く売却するしかないという結論になります。
事故物件の賃料・売却相場価格
事故物件は10〜50%程度の値引きが必要になるケースが多いです。成約のハードルとしては孤独死(自然死・病死・事故死)< 自殺 < 殺人の順で高くなり、殺人現場となった物件では半額以上の値引きが必要となるケースがあります。これは、部屋が死亡現場であることに加え殺人事件が発生するような治安が悪いエリアというイメージの影響もあります。
事故物件の扱いに困ったら早めに売却を
売却用の事故物件に関しては告知義務が永遠に発生することから、ほとぼりが覚めるまで待つということができません。一旦安くなった物件は安いままなので、早めに手放すことが必要です。安い価格で売却するのを渋り、空き物件のまま建物や設備が老朽化すればさらに売りづらくなります。賃貸物件であっても告知義務がなくなる3年の間にキャッシュフローが悪化する可能性もあるので、状況によっては売却を検討するのも良いでしょう。なんでも不動産買取では事故物件の買取を積極的に行っております。お気軽にご相談ください。